改正省エネ法におけるDR(デマンドリスポンス)の体系的整理
省エネ法定期報告書、改正省エネ法「電気の需要の最適化」、改正省エネ法におけるDR実施資料を突き合わせ、DR(デマンドリスポンス)部分を条文・計算式・評価方法も含めて体系的にまとめました。
改正省エネ法におけるDR(デマンドリスポンス)の整理
1. DRの法的位置づけ
改正省エネ法(令和4年度改正)では、工場・事業場に対して
「電気の需要の最適化」
を定期報告書にて義務付け。
評価は二本柱で構成: ①
DR実績(実施日数・回数)
② 電気需要最適化評価原単位
2. DR実績の評価(定期報告書様式1-3)
報告内容
「電気の需要の最適化に資する措置を実施した日数」を記載。
カウント方法:
同一日に複数回のDRを行っても「1日」とカウント。
複数事業所の場合は「最も多い事業所」の日数を記載。
カウント対象
対象:
小売電気事業者やアグリゲーターのDR指令による対応(上げ・下げDR)
需要家が自主的に実施したDR(上げ・下げDR)
対象外:
需給ひっ迫時の上げDR
出力制御時の下げDR
単なる省エネ活動や偶発的な使用量変動
逆潮流によるDR
成功判定
下げDR
:実使用量 < ベースライン
上げDR
:実使用量 > ベースライン
基準値は設けず、「少しでも上下すればカウント可」。
3. 電気需要最適化評価原単位(定期報告書様式2-1)
算出式
電気需要最適化評価原単位 =(A''-B-B')/C
A
:エネルギー使用量(燃料・熱・電気の合計)
A''
:Aのうち、非化石燃料は0.8倍補正し、さらに電気需要最適化係数を考慮した使用量
B
:販売した副生エネルギー量
B'
:購入した未利用熱量
C
:エネルギー使用量と密接な関係を持つ値(生産数量、延床面積、売上高、ベッド数×稼働率 等)
4. 電気需要最適化係数(報告上の補正値)
(1) 時間帯別(30分 or 60分単位計測)
出力制御時(8~16時):
3.60 MJ/kWh
需給ひっ迫時(予備率5%未満の日 0~24時):
12.2 MJ/kWh
その他時間帯:
9.40 MJ/kWh
(2) 月別(1か月単位計測)
出力制御時間帯:3.60 MJ/kWh
需給ひっ迫時間帯:12.2 MJ/kWh
その他時間帯:9.40 MJ/kWh ※実績に基づき月平均で算定
5. DR評価の二段階構造
第1段階(義務)
DR実施日数の報告(シンプル)
第2段階(任意)
高度なDR評価(実施量kWhまたは需給調整市場の⊿kW×時間で評価)
ベースライン算定方式例:「High 4 of 5(当日調整あり/なし)」「同等日採用法」「事前計測」等
6. DR取組事例
上げDR
需給逼迫以外の時間に蓄電池やEV充電で需要を創出。
下げDR
需給逼迫時間に空調・照明等を抑制、蓄電池から放電。
実施主体
アグリゲーターDR・自主DRいずれも対象。
7. 専門的解説
意義
改正省エネ法では、単なる省エネ(削減)だけでなく
「需給バランスに応じた需要調整(DR)」
を制度的に組み込んだ。
評価の特徴
DRは「実施日数」で裾野を広げる一方、任意で「実施量」まで評価する二層構造。
原単位算定では、需給状況に応じてエネルギーの重み付けを変えることで
「需給調整に貢献する事業者ほど有利」
となる仕組み。
留意点
上げDR・下げDRのうち「逆向きDR(需給ひっ迫時の上げ/再エネ余剰時の下げ)」はカウント対象外。
報告根拠資料は提出不要だが、自社保存が義務付けられる。
まとめ(要点)
1
DRは、省エネ法上
「電気の需要の最適化」
として正式に評価対象化。
2
義務報告
:DR実施日数(年ごとにゼロ回答も可)。
3
任意報告
:DR実施量(kWhまたは⊿kW×hr)。
4
補正係数
:需給状況に応じて3.6 / 9.4 / 12.2 MJ/kWh を適用。
5
原単位算定式
: (A''-B-B')/C を基礎に、需給状況補正と非化石補正を組み込む。
CostBox-DR Series
作成日: 2025年9月27日